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同一労働・同一賃金

弁護士 金 良寛

1 はじめに

2018年6月29日に成立した働き方改革関連法を受けて、パートタイム労働法が改正され「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下、「パート・有期法」と言います)に名称が変わりました。

パート・有期法の施行日は原則2020年4月1日ですが、中小事業主については、2021年4月1日となります。そのため、中小事業主の皆様におかれましては、パート・有期法に従った雇用管理の構築が求められることになります。

 

2 働き方改革とは

働き方改革とは、少子高齢化による労働力人口が減少する中「一億総活躍社会」を実現するために、多様な働き方を可能とする社会を目指し、長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現のために行う抜本的な改革のことを言います。

働き方改革のポイントは以下の3つあります

  • 時間外労働の上限規制の導入(労働基準法36条4項)
  • 年次有給休暇の確実な取得(労働基準法39条7項)
  • 正規雇用と非正規雇用の間の不合理な待遇差の禁止(パート・有期法8条)

本コラムでは、このうち③について解説させていただきます。

 

3 パート・有期法8条

(1)「パート・有期法8条」の内容

パート・有期法8条は、パートタイム労働者又は有期労働者(以下「パート・有期労働者」と言います)と「通常の労働者」(=正規雇用労働者)との待遇を比較して、「不合理」な待遇差を禁止することを定めています。

 

(2)比較対象となる「通常の労働者」の待遇

パート・有期労働者の待遇の比較対象は「通常の労働者」の待遇です。

「通常の労働者」とは、パート・有期労働者が勤務している事業所だけではなく、パート・有期労働者が雇用されている企業内の全ての事業所で勤務している者を対象とします。そのため、企業全体の中から個々の待遇ごとに、それに対応する正規雇用労働者の待遇と比較して、不合理性を判断することになります。

 

(3)「不合理」性の判断基準

「不合理」性の判断は、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして、適当と認められる考慮要素(①職務内容②職務内容・配置の変更範囲③その他の事情)を抽出して、それとの関係で待遇の相違の不合理性を判断することになります。

例えば、通勤手当を正社員には支給する一方、非正規社員には支給しないという場合を考えてみます。通勤手当を支給する趣旨は、通勤に要する交通費を補填する点にあるところ、労働契約に期限の定めがあるか否かで通勤に要する費用は異なりません。また、職務内容が異なったとしても通勤に要する費用が変わりません。そのため、この待遇差は不合理なものであると考えられます。

 

(4)同一労働・同一賃金ガイドライン

2018年12月28日、厚生労働省は不合理な待遇差の禁止等に関する基本的な考え方を明らかにして事業主・労使の取組みを促す趣旨で同一労働・同一賃金ガイドライン(以下、「本指針」と言います)を公表しました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

 

本指針に違反した待遇差は「不合理と認められる可能性がある」と定められています。しかし、裁判所は本指針を参考に不合理性を判断する可能性は高く、雇用管理の構築にあたっては、本指針の内容を踏まえた上で検討するのが無難です。

 

4 おわりに

厚生労働省の本指針が公表されているとはいえ、問題となる全ての事案に対応しているわけではありません。そのため、多数の裁判例・省令等を踏まえて判断をする必要があります。

同一労働・同一賃金に関する改正内容、改正を踏まえた雇用管理に関してご不明な点がある場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。

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