懲戒処分に関する法的ルールについて(続き)のサムネイル

懲戒処分に関する法的ルールについて(続き)

労働者に対する懲戒処分が無効にならないためには、法的ルールに則って行わなければならず、処分及び手続が相当でなければなりません。

 

1 初めに

前回のコラム(https://www.legal.ne.jp/column/orbis22073/)で、懲戒処分を行うにあたり、懲戒処分が有効になるための3つの要件のうち、①懲戒処分事由該当性について述べました。

本コラムでは、残りの要件である②処分相当性、③手続相当性について述べたいと思います。

 

2 処分相当性

処分相当性については、主に4つのルールがあります。

1つ目は、懲戒処分の種類を就業規則に明確に定めなければならないというルールです。

就業規則に記載されていない懲戒処分を行うことはできません。例えば、就業規則において経歴詐称を理由とする懲戒処分の種類を出勤停止・減給・格下げにとどめるものと規定している場合は、懲戒解雇にすることはできませんし、より軽いけん責処分であっても特段の事情がない限り、課すことができせん。

 

2つ目は、課される懲戒処分は、労働者の懲戒事由の程度・内容に照らして相当なものでなければならないというルールです。

どのような懲戒処分を課すかは使用者の裁量によりますが、労働者に対して不当に重い処分を選択すれば、権利濫用として無効になりえます。

 

3つ目は、懲戒処分は、同種の非違行為に対しては、同等のものでなければならないというルールです。

懲戒処分については先例を尊重することが要請されるため、ある労働者の非違行為に対して以前は減給処分としたにもかかわらず、他の労働者の同種の非違行為に対し、今回は懲戒解雇とすることは、事情の各種変更などの懲戒処分を正当化する特段の事情がない限り、無効になりえます。

 

4つ目は、懲戒事由発生時期と懲戒時期は近接していなければならないというルールです。

例えば、非違行為から約2年経過後の懲戒解雇は無効となりえ、そのように判断した裁判例も存します(東京地判平成24年3月27日労判1053号64頁)。

 

3 手続相当性

懲戒処分を課す労働者に対し、就業規則等の規定の有無にかかわらず、本人への弁明の機会を実質的に付与しなければなりません。

弁明の機会の付与を欠く場合には、特段の事情がない限り、懲戒処分(特に懲戒解雇等の重い処分)は無効になることとなります。

また、手続保障の観点からは、就業規則にて賞罰委員会等を設け、懲戒処分を行う場合には賞罰委員会による諮問を受けることを義務化する等の対策を講じるのが望ましいです。

なお、使用者が弁明の機会の付与等、手続保障を行おうとしたにもかかわらず、労働者自らこれに誠実に対応しない場合はそれに応じた対応をすれば良いとされています。

 

4 最後に

懲戒処分は労働者に不利益を課すことになるため、労働者との間で最も紛争が生じやすい場面の一つです。そのため、就業規則等をきちんと定め、手続についても不備がないようにしておかなければならず、懲戒処分を行うにあたっては、事前に慎重かつ十分な検討が必要です。懲戒処分の内容や方法、手続について何か少しでもご不明な点等ございましたら、弊所に気軽にご相談頂ければと思います。

 

弁護士 丁海煌

30分無料 Zoom 法律相談

特定分野について、
初回30分無料の法律相談を実施しています。

詳細を見る

お問い合わせ

東京事務所
受付時間 月~金 9:00~18:00
大阪事務所
受付時間 月~金 9:00~18:00

お問い合わせフォーム