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懲戒処分に関する法的ルールについて

弁護士 丁海煌

 

懲戒処分とは、使用者が労働者に対し、労働者の企業秩序違反行為に対して加える制裁罰としての労働契約上の不利益措置のことを言います。

懲戒処分の種類には、懲戒解雇、論旨解雇、降職、降格、懲戒休職、出勤停止、減給、戒告、訓告、けん責等があります。

また、懲戒事由としては、経歴詐称、職務懈怠、業務命令違反、職場規律違反、職場外での非違行為等を挙げることができます。

 

本来、使用者と労働者は独立対等な契約当事者であるものの、判例は企業秩序維持の観点から、使用者が制裁罰である懲戒処分を課すことができるとしています(最一小判昭和58年9月8日労判415号29頁)。

もっとも、労働契約法15条は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と規定しており、具体的には、懲戒処分は実質的に周知された合理的な内容の懲戒処分の根拠規定の存在を前提に、①懲戒処分事由該当性、②処分の相当性、③手続の相当性の要件を満たしてはじめて有効となるとしています。

本コラムでは、①懲戒処分事由該当性について述べたいと思います。

 

①懲戒処分事由該当性については、主に3つのルールがあります。

1つ目は、懲戒事由を就業規則に明確に定めなければならないというルールです。労働者に何らかの非違行為があったとしても、当該非違行為について就業規則に懲戒事由として定められていなければ、懲戒処分をすることができません。また、一般の就業規則には列挙された懲戒事由の末尾に「その他これに準じる事由が存する場合」等の記載されることが多いですが、このような記載があれば非違行為を網羅できるのかといえばそうではなく、判例上限定的に解釈される場合が多いです。

2つ目は、新設した懲戒規定を新設する以前の行為に適用してはならないというルールです。従業員に何らかの非違行為があった時点での就業規則に記載されている懲戒事由のみが対象となり、行為後に追記したことをもって懲戒処分をすることはできません。

3つ目は、過去に懲戒の対象となった行為について重ねで処分することはできないというルールです。同一行為はもちろんのこと、過去の行為と新たな対象行為との間に社会的同一性ないし関連性が認められる場合においては、懲戒処分が無効となる場合があります。

 

このように、懲戒処分は労働者に不利益を課すことになりますので、使用者と労働者との間で最も紛争が起きやすい場面と言っても過言ではありません。労働者に何かしらの問題があり、懲戒処分をご検討されている等、その内容や方法、手続について何か少しでもご不明な点等ございましたら、弊所に気軽にご相談頂ければと思います。

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