弁護士 成末奈穂
1 被相続人が韓国国籍(在日コリアンを含む)の方の相続の準拠法
2 相続における韓国民法と日本民法の違い
(前編の内容)
前編はこちをご覧ください。
3 被相続人が韓国国籍(在日コリアンを含む)の方の相続につき、準拠法を日本法にする意義
上記のような韓国民法と日本民法の違いから、例えば、⑴前妻との間に子が多くいるが、若い後妻の生活基盤確保のためにも、できるだけ多く後妻に相続させてやりたい、⑵子が先に亡くなっているが、その配偶者には相続させたくない、⑶推定相続人のうち、どうしても遺留分ですら取得させたくない相続人がいる、という場合には、日本民法を準拠法にする意義があると言えます。
4 被相続人が韓国国籍(在日コリアンを含む)の方の相続につき、準拠法を日本法にする方法
大韓民国国際私法第49条第1項は、「相続は死亡当時被相続人の本国法による。」と、通則法と同様の規定をしていますが、同条第2項は、「被相続人が遺言に適用される方式によって、明示的に次の各号の法中いずれかを指定するときは、相続は、第1項の規定にかかわらずその法による。」と規定しており、同項第1号は「指定当時被相続人の常居所がある国家の法。ただし、その指定は、被相続人が死亡時まで、その国家で常居所を維持した場合に限り、その効力を有する。」と規定しています。
つまり、韓国国籍(在日コリアンを含む)の方の住民登録が日本にあり(「常居所」)、そのまま亡くなった場合で、遺言により、準拠法を日本法と指定している場合、その方の相続の準拠法は日本法となるのです。
5 まとめ
以上のとおり、被相続人が韓国国籍(在日コリアンを含む)の方の相続につき、準拠法は韓国法となるのが原則ですが、日本法にする意義やその方法についてご説明しました。韓国法・日本法いずれを準拠法とするのが、被相続人ご自身の意図に沿うのか、また、遺言によって準拠法を指定する場合の具体的文言等、様々な検討が必要です。お気軽に弊所までご相談下さい。