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被相続人が韓国国籍(在日コリアンを含む)の方の相続につき、準拠法を日本法にする意義・及びその方法(前編)

弁護士 成末奈穂

 

1 被相続人が韓国国籍(在日コリアンを含む)の方の相続の準拠法

相続問題において、日本で遺産分割調停の申立てがされた場合等は、日本の国際私法である「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」といいます)が適用されます。この場合、通則法第36条には「相続は、被相続人の本国法による。」と規定されていますので、被相続人の本国法(その人が国籍を有する国の法)が準拠法として適用されることになります。つまり、被相続人が韓国国籍(在日コリアンを含む)の場合は、韓国民法が準拠法になるのが原則です。

 

2 相続における韓国民法と日本民法の違い

相続につき、韓国民法は日本民法とは異なる定めをおいています。その中でも、法定相続人の範囲とその相続分についての違いは、過去のコラム

https://www.legal.ne.jp/column/orbis22092/)をご参照ください。韓国民法においては、配偶者の相続分は、他の相続人の1.5倍とされています(韓国民法第1009条第2項)。すなわち、相続人が配偶者と子1人の場合には、配偶者:子の相続割合が3:2であり、配偶者の相続分は5分の3ですので、日本民法の場合(配偶者の相続分は2分の1)よりも配偶者の相続分が多くなります。一方、子の人数が多い場合は、韓国民法の方が日本民法より配偶者の相続分が少なくなります。例えば、相続人が配偶者と子6人の場合、日本民法が準拠法であれば、各相続人の相続分は、配偶者が2分の1、子1人あたり12分の1となりますが、韓国民法が準拠法であれば、各相続人の相続分は、配偶者が5分の1、子1人あたり15分の2となり、日本民法と比べ、配偶者の相続分が相当低くなります。

また、代襲相続の点でも違いあります。韓国民法が準拠法であれば、相続開始前に死亡していた子の配偶者が代襲相続人となるので(韓国民法第1003条第2項)、被相続人からみれば、子と相当以前に死別しており、全く付き合いがなくなった義理の息子・娘であっても、自身の相続人になる、という状況が生じます。

さらに、日本民法においては、推定相続人が被相続人に対して虐待をし、重大な侮辱を加えたとき、または、その他の著しい非行があったときは、廃除の請求をすることができる旨が定められています(日本民法第892条)。平たく言うと、推定相続人であっても、遺留分すらなくすことができるという制度です。「遺留分」については、過去のコラム(https://www.legal.ne.jp/column/orbis2183/)をご参照ください。(後編に続く)

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