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日韓ビジネスにおける準拠法と裁判管轄

弁護士 金紀彦

 

準拠法とは、契約等による法的権利関係について、どこの国の法律や判例、法解釈によって判断するのかという問題です。また、裁判管轄とは、法的権利関係について争いが生じた場合に、どの国のどの裁判所で解決を図るのかという問題です。複数の国にまたがった法的権利関係が生じる国際ビジネスにおいては、準教法と裁判管轄に関する規定が設けられることが通常です。仮にそのような規定がなかった場合であっても、法解釈や商慣習などに基づいて準拠法や裁判管轄が決まりますが、そのような場合、準拠法や裁判管轄自体についての争いが生じて裁判が長引いたり、予期せぬ結果になって損害を被ったりすることがあります。したがって、国際ビジネスに関する契約書においては、準拠法や裁判管轄に関する規定を置いておくことが、双方にとって望ましいのです。

準拠法や裁判管轄については、契約当事者双方の交渉によって決まりますので、当該契約におけるパワーバランスが反映されます。そして、準拠法や裁判管轄は、弁護士費用や翻訳・通訳費用、交通費などの金銭的コスト面でも、また、法律や慣習が異なる別の国の法律や判例、法解釈にしたがう場合には十分な予測可能性が担保できないという面でも、可能であれば、自らの国の法律を準拠法に指定し、また、裁判管轄を自らの国の裁判所に定めた方が有利です。すなわち、契約にあたって有利な立場の当事者は、準拠法も裁判管轄も自らの国の法律や裁判所を指定することとなり、不利な立場の当事者は、それを受け入れて、そのリスクを負うことになります。

日韓ビジネスにおける準拠法に関しては、日本と韓国は、法体系が類似していますので、どちらの国の法律を準拠法と定めても、大きな違いが生じない場合もあります。しかしながら、韓国においては、日本よりも、社会状況を反映した法改正や新法創設、判例変更などが早期に行われる傾向にあります。そのため、準拠法を韓国法と指定すると、日本側としては予期していなかった事態に陥るリスクがありますので、十分な検討が必要です。

また、韓国の裁判においても、通常の経済的事案であれば、事実経過やそれを立証する証拠の有無によって判断されますので、韓国の裁判所を専属的合意管轄裁判所とすることが絶対的に不利というわけではありません。しかしながら、日本語側からすると、韓国の弁護士に依頼した上で、地理的に離れた韓国の裁判所において、翻訳または通訳を通じて韓国語で裁判を進行するためには、金銭的にも時間的にも労力的にも大きな負担が生じます。この点、どちらかの国の裁判所だけで裁判をすることができるという内容にするのではなく、両方の国の裁判所に裁判管轄を認めたり、契約の相手方の国の裁判所を専属的合意管轄裁判所に指定したりする方法もありますが、それぞれ、メリットとデメリットがありますので、注意が必要です。また、シンガポールなどの第三国における仲裁を利用する方法もありますが、仲裁における使用言語や当該国における仲裁の状況などを把握しておかないと、思わぬ被害が生じるおそれがあります。

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