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相続人以外の親族に認められる特別寄与料

弁護士笹沼永浩

相続について問題が起こる際に、だれがどれだけの相続を受けるかという問題はとても多く発生します。特に、被相続人が生前、看護や介護が必要だった場合には、特定の誰かが看護・介護を負担していることが多く、不公平感を感じて相続の争いとなることが少なくありません。この問題が相続人のみの間であれば、改正前の法律では「寄与分」として、公平感を保つことができましたが、相続人ではない、例えば被相続人の長男の妻が、義理の親である被相続人の看護や介護を行っていたという(決して珍しくない)ケースにおいては、改正前の法律では手当てをすることができませんでした。改正前の制度では、看護・介護を行っていた被相続人の長男の妻は、相続人に当たらないため、寄与分(民法904条の2)が認められず、相続に当たっては部外者とされてきたのです。

なぜ相続人以外の者が部外者とされてきたかというと、寄与分(民法904条の2)というのは、「相続人」のみが、被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に、他の相続人よりも相続財産を多く分けてもらうことができる制度であり、相続人以外の者は対象外だったからです。

このような場合について、従前の裁判所は、被相続人の療養看護を、実際に行った長男の妻ではなく、被相続人の長男自身の寄与であると無理やり評価して、寄与分を認めるという手当てをしてきましたが、あてはまらないケースも多く、問題がありました。

このような状況を打開するために、「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」(法務省 法制審議会民法(相続関係)部会第19回会議)として今回の改正で取り入れられたのが、療養看護に努めた相続人ではない親族の「特別寄与料」の制度です(新民法1050条)。

特別寄与料を請求できる特別寄与者は、以下の要件を満たしている者を指します。

①被相続人の親族であること(相続人、相続の放棄をした者、相続の欠格事由に該当する者及び廃除された者を除く)

②①の者が被相続人に対して療養看護その他の労務を提供したこと

③②により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたこと

④②が無償であること

上記の要件を全て満たす場合、その寄与をした親族は、相続人に対して寄与料を請求することができるようになったのです。

もっとも、②がどの程度の労務を要求しているのか、③の特別の寄与がどういったものであるのかは不明確です。加えて、そもそも、この特別寄与料を請求することで相続が紛争化してしまう等の可能性があり、結局は親族間で深刻な争いを招いてしまうという懸念もあります。この通り、この特別寄与料を請求する際、個人で請求すると、思わぬ紛争を招きかねないので、法律専門家に相談することをお勧めします。

また、このような紛争を未来に残さないためには、被相続人が生前に遺言書をきちんと整備しておくということが肝要です。どんなに仲の良い親族でも、相続のように様々な利害が絡んでしまう問題に直面すると、それぞれの事情や感情のもつれから紛争が複雑化してしまうことが多いというのが実情です。生前に遺言書を作成しておくことで、このような紛争を避けることができます。遺言書を作成する際にも、専門家へのご相談をお勧めします。

当事務所では、遺言書作成や遺言執行者の経験もある弁護士が複数所属しています。そして、相続に関しても様々な問題を解決してきた実績があります。看護、介護が絡む問題を含む相続問題について、是非、当事務所までご相談いただければと思います。

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