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社内のパワハラ対策してますか?-パワハラ防止法の施行-

弁護士 金 紀彦

 

2019年6月5日、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法。以下「法」といいます)の改正が公布されました。この改正は、職場でのハラスメント対策の強化を企業に義務付けています。

この改正を受けて厚生労働省が告示した「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下「指針」といいます)には、職場におけるパワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます)について、以下のとおり、定義しています。

 

職場において行われる

①優越的な関係を背景とした言動であって、

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

③労働者の就業環境が害されるものであり、

①から③までの要素を全て満たすものをいう。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。

 

そして、パワハラの類型として、以下のように分類されています。

ただし、これに限定されるわけでない点に留意して下さい。

 

・身体的な攻撃(暴行・傷害)

・精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

・人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

・過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

・過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

・個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 

そして、指針において、職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置として、以下の措置が挙げられています。

 

・事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

・職場におけるパワーハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応

・上記の措置と併せて講ずべき措置

-相談者や相談を受けた者、行為者、目撃者などの第三者のプライバシーを保護するために

必要な措置

-労働者が相談したことや相談された者が調査したことなどを理由として、解雇・降格その他

不利益な取り扱いをしないように定め、労働者に周知・啓発すること

 

法には罰則規定がありません。

しかしながら、厚生労働大臣による助言・指導および勧告の対象となり、勧告にしたがわない場合には、企業名が公表される可能性があります。また、パワハラ防止法に違反していることは、労働者によるインターネットへの書き込みなどを通じて、企業のレピュテーションを下げることに繋がります。加えて、パワハラが発生した場合、パワハラをした加害者はもちろん、そのおそれを放置した企業に対しても、民法の賠償責任を問われるおそれがありますし、刑事罰に処されるおそれもあります。

 

また、法は、大企業については2020年6月1日から施行されており、中小企業については、2022年3月31日までの努力義務期間を設けた上で、2022年4月1日から施行されます。

ただし、施行前であっても、上記の民法上の損害賠償責任や刑事罰のおそれは避けられませんので、注意が必要です。

 

もっとも、法の改正や指針の告示は、企業にとって不利なばかりではありません。今まで曖昧だったパワハラがある程度、明確化されることによって、様々な社内トラブルの発生を回避したり、パワハラ行為が起こった場合の対処が容易になったりします。

もちろん、パワハラが発生しないようにすることが一番大切ですが、法や指針に合わせた社内体制を整えておくことも重要です。

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