弁護士 成末奈穂
1 労働施策総合推進法の改正
2019年6月5日、改正労働施策総合推進法(以下「改正法」といいます)が公布されました。各種報道機関にて「パワハラ防止法が成立」と報道されていましたが、改正法は、パワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます)を定義づけしたうえで、事業主に対し、パワハラ防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることを義務付けています。
2 「パワハラ」とは
職場におけるパワハラとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです(改正法30条の2)。
⑴ 優越的な関係を背景とした
⑵ 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
⑶ 就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
※ 適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラにあたりません。
3 「事業主が講ずべき雇用管理上必要な措置」について
改正法上、事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために、厚生労働大臣が、労働政策審議会の意見を聴いたうえで、指針を定めることになっています。現行のセクシャルハラスメント防止の措置義務の内容を踏まえて検討されているようですが、この指針は2019年12月下旬に公布予定とされています。
4 改正法の施行日
改正法の施行日は2020年6月1日となるようです。ただし、中小企業については、改正法の公布後3年以内の政令で定める日(2022年3月31日になりそうです)までは、パワハラの措置義務については努力義務となります。
5 パワハラに関する情報発信、弁護士派遣による研修
厚生労働省の「あかるい職場応援団」(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/)で、パワハラに関する様々な情報が発信されています。
また、改正法において、研修の実施等の必要な配慮をすることが事業主の責務とされている(改正法30条の3第2項)ところ、大阪弁護士会では、ハラスメント対策に精通した弁護士を、企業や自治体等に講師として派遣する研修パッケージを実施しています。詳細は以下をご覧ください。