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企業側から見る副業・兼業

弁護士 笹沼永浩

昨今、新型コロナ感染症の蔓延に伴って、多くの企業が、その働き方の改善を迫られ、在宅ワークの増加がみられました。そして、在宅ワークの増加により、自宅等での自由な時間が増えたことや、新型コロナ感染症の蔓延に伴う企業活動の停滞により、収入が減ってしまったことから、副業・兼業(以下「副業等」といいます)が増えてきています。また、平成30年、厚生労働省は、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下、単に「ガイドライン」といいます)を策定し、上記のような流れに先立って副業等を促進してきました。

(参照URL:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf

そこで、以下では、副業等についての企業側の注意点を確認してみましょう。

 

・副業等の禁止

まず、従業員が雇用主である企業に対して負う主たる義務は、所定の労働時間中に労務の提供を行うことです。翻って、所定の労働時間外の私生活をどのように利用するかは、原則、従業員の自由であるといえます。そのため、過去の裁判例でも、就業規則で副業等を禁止することは、特別な場合を除き、合理性を欠き、かかる就業規則に基づく懲戒処分が当然に有効になるものではないと解してきました。

したがって、副業等を就業規則で禁止することは、原則として許されないというべきです。

一方で、企業側としては無制限に副業等を認めた場合、本業に支障が出てしまう、競業他社などで副業等をされてしまえば、重要な機密情報が漏洩したりするなどの不利益が考えられます。そこで、裁判例や学説は、従業員の私生活の自由と、企業が副業等を制約する必要性の調和の観点から、

①労務提供上の支障が生じる場合

②業務上の秘密が漏洩する場合

③競業により自社の利益が害される場合

④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

には、例外的に労働者の副業等を禁止または一定の制限することができると考えています(ガイドライン8頁)。

したがって、就業規則においては、原則として、労働者は副業・兼業を行うことができること、例外的に、上記の①~④のいずれかに該当する場合には、副業等を禁止または制限することができること等を定めることが望ましいでしょう。

 

・副業等に関する届け出について

上記のとおり、副業等について、一定の制限を設けることは許容されています。副業等によって企業の利益が害されないかを把握するために、副業の勤務先、職務内容、勤務時間、勤務日等の人事管理に必要な事項の届け出を義務付けることは問題がないと考えられます。ガイドライン10頁においても、「使用者は、副業・兼業に伴う労務管理を適切に行うために、届け出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましい。」としています。

ただし、副業等への制約は、合理的な範囲で認められるものです。そのため、合理的といえないようなレベルで、副業を行う理由等につき、過度に詳細な届け出を求めることは控えた方が良いでしょう。

 

・就労日数や労働時間の制約

企業側としては、従業員が副業等で疲弊し、本業に支障を来すような事態は避けたいと思います。そこで、このような事態を防止するために、合理的な範囲であれば、副業等の就労日数や労働時間の制限をすることは許容されると考えられます。なお、この合理的な範囲は、本業で提供することが予定されている労務提供の性質等、個別の事情によって変わってくるでしょう。

 

以上、副業等についての企業側の注意点を確認しましたが、上記の他にも時間外割増賃金の支払い義務等、企業側が注意すべき点があります。副業等に関連してご相談がございましたら、弊所にお気軽にご連絡をいただければと思います。

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