弁護士 成末奈穂     

 

 前回の法律コラムで紹介した「お悩みポイント」は以下の2つでした。

 

①認知症になってしまうと、自分の財産であっても自由にできなくなる。家族も出金等ができず、困る。

→ 認知症により判断能力が不十分になったと銀行が判断する場合、銀行は、ご本人の資産を守る必 要があるという理由で、預金口座の出金・振込等ができないようにします(いわゆる預金口座の「凍結」)。

 

② 家族が成年後見の申立てをした場合、裁判所は、財産がそれなりにある人の場合は専門職後見人を選任し、安くない後見人報酬が発生してしまう。

→ 預金口座の凍結によって、生活費等を出金することができず、困った家族が銀行に相談したとしても、銀行は、「家族」だというだけでは、判断能力が不十分になった方の財産を管理・処分することを認めてくれません。

 銀行は、家庭裁判所に対し、成年後見の申立てをし、成年後見人を選任してもらうことを勧めることが多いです。

 しかし、成年後見の申立てをするのにも申立費用がかかります。また、裁判所は、8割近い案件について、親族の後見人ではなく、第三者である専門職後見人(弁護士、司法書士等)を選任しています。

 専門職後見人に対しては、裁判所が決める金額の後見人報酬を、ご本人の財産から支払うことになります。後見人報酬は、最低でも月額2万円以上で、ご本人の保有資産が高額(5000万円超)であれば月額5~6万円になります。

 

 「家族信託」は、ご本人が認知症になる前に、誰に、どのように財産を管理・処分・運用してもらうかを、ご本人のご意向を反映して、自由に決めることができる仕組みです。

 「家族信託」を設定しておけば、預金口座が凍結されることや、第三者の専門職後見人が選任されることを回避することができます。

 次回、具体的な事例で、どのような「家族信託」を設定するのかをご紹介したいと思います。