弁護士 笹沼 永浩

1 定型約款の規定の新設

現代社会においては、大量迅速に多数の顧客と取引を安定的に行うために、契約に際して約款を用いることが、必要不可欠となっています。

しかし、約款に関して、改正前の民法は特段の規定を設けていませんでした。そこで、改正後の民法(以下「新法」といいます。)では、定型約款に関する規定を新設することとなりました(新法第548条の2~第548条の4)。

なお、定型約款の例としては、鉄道の旅客運送取引における運送約款、保険取引における保険約款、インターネットを通じた物品売買における購入約款、インターネットサイトの利用取引における利用約款等が挙げられます。一方、個人が管理する小規模な賃貸用建物について、雛形を利用して賃貸をするといった場合の雛形は、ここにいう定型約款には当たりません。

なお、定型約款に関しては、施行日前に締結された契約にも、改正後の民法が適用されますが、2018年4月1日から、施行日前(2020年3月31日まで)に反対の意思表示をすれば、改正後の民法は適用されないこととされています(改正法附則第33条第2項・第3項 参照)。

 

2 定型約款の変更について

(1)概要

定型約款に関する問題の中で特に注意が必要なところは、定型約款の変更です。実業界からも、法制審議会へ規制を設けることの要望が多かったのは、定型約款の変更についてでした。詳細かつ多数の条項がある定型約款において、法令の変更や経済環境の変動等に対応して、定型約款の内容を変更する必要が生じることは少なくありません。しかし、定型約款は不特定多数を相手方とする取引で用いられており、相手方の承諾を得るのに多大な時間とコストを要してしまいます。

そこで、新法は、定型約款の変更の効力を争う際の枠組みを明瞭にすることで、定型取引の相手方の保護を図りながら、定型約款準備者が相手方の同意を得ることなく一方的に契約の内容を変更する「定型約款の変更」の制度を設けました(新法第548条の4)。

 

(2)定型約款の変更の要件

定型約款の変更が有効と認められるためには、実体的要件と手続的要件を充足する必要があります。

 

まず、実体的要件としては、その変更が①相手方の一般の利益に適合するか、又は②定型約款の変更が契約目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的なものであるときのいずれかが要求されています(新法第548条の4)。

①は、有料の継続的サービスで、相手方の支払う金額を減額することや、サービス自体の内容を相手方に負担の無い形で拡充するような場合をいいます。

②の、合理性の判断については、「変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款を変更することがある旨の定めの有無及びその内容その他変更に係る事情」が考慮事情となります。これらはあくまで考慮事情なので必ずしも、全てが完全に要求されているという訳ではありません。

 

次に、手続的な要件として、定型約款の準備者は、定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨・変更後の定型約款の内容・その効力発生時期を、インターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならないとされています(新法548条の4第1項)。

さらに、上記の実体的要件②に基づく変更の場合、相手方保護のため、効力発生時期の到来までに同項の規定による周知をしなければ、その効力は生じないとしています(同条第3項)。

 

3 終わりに

 以上、定形約款についてご紹介しました。定型取引は現在でも多く、これからも更に増えていくことと思います。定型約款に関する改正内容、改正を踏まえた契約に関してご不明な点がある場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。