弁護士 金 慶幸

 国際的に裁判手続のIT化が実施されている中で、日本は大きく出遅れている状況があります。日本の裁判手続は国際社会からも厳しい評価を受けており、政府主導で裁判手続のIT化が推進され、2017年10月、「裁判手続等のIT化検討会」が設置されました。そして、2018年3月30日、同検討会は、「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ―『3つのe』の実現に向けて―」(以下「検討会取りまとめ」と言います。)と題して、次の3つの方針を示しました。

 

 ①e-提出(e-filing)

  訴状などの書面や証拠をオンラインで提出すること

 ②e-事件管理(e-case management)

  訴訟記録をオンラインで確認し期日を管理すること

 ③e-法廷(e-court)

  オンライン上で口頭弁論期日等を開催すること

 

 検討会取りまとめによると、「フェーズ1」、「フェーズ2」、「フェーズ3」と称して、段階的に前記の①~③のIT化が実施されます。

 「フェーズ1」は、現行法下で実施可能な手続です。具体的には、2020年2月頃から、ウェブ会議やテレビ電話会議等を特定庁(東京地裁、大阪地裁等)で実施する予定です。もっとも、ウェブ会議の実施にあたっては、弁護士は各自のパソコンに専用ソフトをダウンロードするなど、環境整備が必要となっています。

 フェーズ2は、法律の改正を要する手続のことです。これまで、弁論準備手続の電話会議では原告と被告のどちらか一方は裁判所に必ず出頭する必要があったところを、双方出頭せずに弁論準備手続を実施できるよう法律を改正すると言われています。

 フェーズ3は、予算措置を必要とするものです。裁判所のサーバーの構築や、本人訴訟のサポートのための環境整備を要するものです。

 アメリカ、シンガポール、韓国等では、IT化した裁判手続が広く普及しており、EUの中で一番遅れていると言われていたドイツでさえも、2020年に完全IT化が実現する見込みです。このような中、日本の裁判手続のIT化が遅れていることによって、ビジネス環境にもマイナスの影響を及ぼすことになりかねず、裁判手続のIT化は急務です。

 しかし、本人訴訟が多い日本で、どこまで本人が裁判手続のIT化に対応できるのか、証拠調べをどうするのか等、多くの問題が残されています。

 IT化に追い付けない人たちの裁判を受ける権利を守りながら、裁判手続のIT化を進めていく必要があると思います。