弁護士 金 紀彦

 日本には、2016年末時点で、暴力団の構成員が約1万8100人います。また、準構成員(構成員ではないが、暴力団と関係を持ちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為等を行う者など)もあわせると、3万9100人います。また、最近は暴力団の活動も巧妙化し、効率のよい資金獲得方法として、企業に近づき、または、自らも通常の企業のように装って不当要求を行う等する事例が増えています。そして、そのような暴力団に知らない間に利用され、経営自体が傾く企業もあります。

 このことからも分かるとおり、暴力団や不当要求への対策を行うことは、自分の会社のコンプライアンスそのものであり、会社を存続させていく上で必須のことといえます。

 この点、日本政府は、2007年に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表しました。この指針では、暴力団を含む反社会的勢力との一切の関係遮断が求められています。すなわち、仮に適正な価格の取引であっても、反社会的勢力とは取引を行ってはならないということです。適正な価格の取引であっても、反社会的勢力の資金源になってしまうからです。

 また、この指針では、取引先と契約書を締結するにあたって、相手方が暴力団の構成員であることが判明した場合などには契約を解除できるという暴力団排除条項を設けることを努力義務としています。努力義務とはいえ、ないがしろにすると、取締役の善管注意義務に違反すると言われかねませんし、各都道府県で定められている暴力団排除条例では、暴力団関係者に利益供与した場合などには会社名の公表などのペナルティーが科されることがありますので、きちんと対応する必要があります。

 最近では、一見すると暴力団や不当要求とは関係ないような売買契約や賃貸借契約、業務委託契約なども含めて、あらゆる契約書に暴力団排除条項が設けられています。裁判所も、そのような条項についての有効性を認め、暴力団員であることが判明したことによる契約解除を認めています。

 ただ、暴力団や不当要求への対策をどのように行っていいのかについては、一般の方には分かりにくいことがあります。また、中途半端に対策を行うと、その対策の穴を狙われるおそれがあります。

 そこで、おススメなのは、不当要求防止責任者を選任し、警察に届け出ることです。そうすることによって、不当要求防止責任者講習を受講することができ、暴力団や不当要求への対策の専門家である警察官や弁護士から、適切な対応方法を学ぶことができます。そして、その成果を会社に持ち帰って、暴力団や不当要求に対応する社内態勢の整備を行うことができます。また、不当要求防止責任者講習を受講すると、不当要求防止責任者を選任している旨が記載されたステッカーをもらうことができ、これを会社の入り口に貼っておくことによって、不当要求を未然に防ぐ効果が期待できます。

 私も、ここ数年、不当要求防止責任者講習の講師を務めていますが、年々、暴力団対策や不当要求対策への関心が高まっていることを感じており、毎回、多くの方に熱心に参加していただいています。